ファスティングメソッド

ファスティングとは ー驚異の健康法「断食」の定義・必要性・効果ー

what-is-fasting

定義:ファスティングとは

「ファスティング(Fasting)」とは、英語の「Fast:断食する、絶食する」の動名詞で「断食」という意味を指します。
朝食のことを英語で「breakfast」(ブレックファスト)といいますが、これは、1日の中で最も食事を摂らない夕食から朝食までの時間である「fast」(断食)を「break」(破る)というキリスト教の言葉に由来しています。ファスティングは、世界ではもちろん、日本でも修行の一環として、時に宗教的な儀式として現在も数多く存在しており、仏教をはじめ、キリスト教やユダヤ教、イスラム教、ヒンズー教などでも修行としてファスティングが行われてきました。

ヒポクラテス(古代ギリシアの医師、「医学の父」、「医聖」)
・「満腹が原因の病気は空腹によって治る
・「月に一度断食をすれば病気にならない」
・「病人に食べさせると、病気を養うことになる。一方、食事を与えなければ、病気は早く治る」

 

断食と絶食

断食とはファスティングのことで、文字通り食物を一切摂取しません。古来より開悟法や儀式として行われてきた歴史的背景から、宗教的であり、時に辛く厳しいものというイメージや、日々空腹感と戦い、身体に悪影響を与えるだけでなくやめた途端にリバウンドしてしまう、非常に危険なダイエット法というイメージは決して間違ったものではなく、未だに存在している絶食法(本断食、古来より行われてきた水のみで行う断食を『絶食』という)です。

 

絶食は日常生活を送りながら気軽に行うことは非常に難しく、逆に不調や肥満を招いてしまう場合もあります。エネルギー源となる三大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)だけでなく、生命活動の営みに必要不可欠な微量栄養素(ビタミン、ミネラル)もほとんど摂取せずに行うからです。急激にエネルギーと栄養素の摂取を断たれ、消化器官が急停止した身体は、体内を急激にデトックスしようと解毒器官(主に肝臓)に毒素を送り込み、解毒機能が追いつかずに溢れ出た毒素が血流に乗って体内を循環してしまいます。

しかし、近年の生命科学・遺伝子工学の進歩は目覚ましく、ファスティングは今までの絶食とは明らかに一線を画すところまできています。そして、ファスティングがもたらす多くの効果が、現代人を蝕んでいる様々な不調から解放するきっかけになることもわかってきているのです。

私が運営する協会(ファスティングフィットネス協会)が推奨するファスティング法は、分子整合医学をベースに作られており、必要最低限のカロリー、効果を最大限に引き出すためのミネラルやアミノ酸を含んだドリンクを摂りながら行っていきます。水だけで行う絶食法とは違い、危険性・空腹感がほとんどなく、日常生活を続けながら行うことが可能なのです。

表1.ファスティングと絶食の比較

表1.ファスティングと絶食の比較

必要性と効果

現代は、工場や車の排煙などにより、年々大気汚染や海洋汚染が深刻化しています。また、工業の目まぐるしい発展により「食物」としての機能を失った、加工食品や養殖食品、食品添加物が食卓を賑わせています。それらは、目に見えないため知らず知らずの間に身体の中に入り込み、健やかに過ごすための様々な機能を徐々に低下させていくのです。近年では、どんなに気を付けても、有害物質の侵入を完全に遮断するのは不可能であるといわれているため、定期的な解毒・排毒を行い、体内の環境を健やかに保つ必要があるといえます。

また、食事を続ける限り絶えず繰り返される、分解、消化、吸収、解毒といった代謝は、消化器官や肝臓といった内臓を疲労させ、機能を低下させる原因になります。これらの内臓への負担を、定期的なファスティングにより取り除くことで、消化吸収や解毒・排毒機能が向上し、体熱産生や体内浄化作用が高まるのです。

  

【ファスティング5大効果】

ファスティングは、単純なカロリー制限をしたり、単一の食物や栄養素を抜いたりするダイエット法とは異なり、体重の減少は付随的なものでしかありません。食を断つことにより、体内に蓄積された毒素の排出、それらに侵され低下していた身体機能の回復はもちろん、人間が本来持っている感覚が研ぎ澄まされ、自然治癒力の向上なども期待できます。そして、結果的に、脂肪は減少し、体重も減っていくのです。

図2. ファスティングの5代効果

図2. ファスティングの5代効果

1.デトックス ~解毒・排毒~

ファスティング中は細胞の内外でデトックスが進み、体内環境が整っていきます。特に有害金属や食品添加物、滞留便などの腸内滞留物は、食事を摂ることによって体内に蓄積していくことが多いため、食事を断つことで、デトックスを進行させることができるのです。それによって、慢性的な不調の軽減や消化器官をはじめとする内臓機能の向上、健やかな肌を作るなどの様々な効果が期待できます。デトックスの効果を十分に得るためには、平均で4~5日以上のファスティング期間が必要です。

表2.毒素の種類

表2.毒素の種類

排毒の中でも、排便によるデトックス効果は非常に高く、悪玉細菌の減少が見られます。腸内に滞留した便の成分のほとんどは脂質とたんぱく質で、それらが腐敗することにより腸内細菌バランスが悪玉菌優位の状態になります。悪玉細菌の減少は、腸内細菌バランスを向上させ、慢性的な不調が改善された例も多くみられます。ファスティングによる滞留便の排出は、平均でファスティング4日目です。滞留便の量は個人差があり、多い人は5~7kgもあるといわれています。

図3.年齢とともに移り変わる腸内のビフィズス菌バランスの割合

図3.年齢とともに移り変わる腸内のビフィズス菌バランスの割合

 

図4. デトックスの比率(出典:「デトックス-話題の毒出し健康法」扶桑社)

図4. デトックスの比率(出典:「デトックス-話題の毒出し健康法」扶桑社)

 

図5. 排便による効果

図5. 排便による効果

2.ダイエット ~脂肪燃焼回路の確立~

ファスティング時は、日常に比べて摂取カロリーが大幅に低下します。食事による摂取エネルギーが活動エネルギーを下回ると、体内でエネルギー負債が起こります。そのため、体内に一定量蓄えられている糖質(筋グリコーゲン、肝グリコーゲン)をメインのエネルギー源として使用するようになります。しかし、グリコーゲンの量には限りがあるため、それらを使い切ると体内に貯蔵されている脂肪を燃焼させてエネルギーを生成するようになり、主なエネルギー源が糖質から脂肪へと切り替わります。

脂肪組織に多く存在する脂肪細胞は、まず、遊離脂肪酸として血中に溶け出します。遊離脂肪酸は血流に乗って運搬され、筋細胞内のミトコンドリアへ運ばれて燃焼します。脂肪がメインエネルギーになると、これらのステップを繰り返し続けるため、脂肪を燃焼させるための回路が確立され、脂肪を燃焼させやすい身体になっていきます。体内に貯蔵されたグリコーゲンを使い切るには2~3日程かかるので、確実に脂肪を燃焼させるためにはファスティングを3日以上継続させる必要があります。

脂肪を燃焼させることは、単にダイエットとしての効果だけではなく、脂肪細胞内に溜まっていた毒素の排出や、体内の脂肪酸のアンバランスのリセットなどが期待できます。

図6. 脂肪燃焼の3ステップ

図6. 脂肪燃焼の3ステップ

3.リペア ~代謝酵素の活性化と内臓の休養~

体内には約3,000種類もの潜在酵素(potential enzyme)があり、消化吸収や代謝など、体内の化学反応を起こす際の触媒として働いています。潜在酵素は、細胞の再生や修復、神経やホルモンのバランスを調整し、恒常性を維持することによって、免疫機能を保持する代謝酵素と、食物に対して直接的な消化作用がある消化酵素とに大別されます。

図7.酵素の分類

図7.酵素の分類

代謝酵素と消化酵素は互いに関係しており、消化酵素が分泌されると代謝酵素の活性が弱まり、消化酵素の分泌量が減ると代謝酵素は活性化するといると言われています。潜在酵素の優先順位としては消化酵素が最優先にされるため、どのような食事をするかによって、潜在酵素のバランスは変わってくるのです。

ファスティング時には、食物を摂らないことにより消化酵素の分泌が抑えられて代謝酵素の働きが活発になります。そのため、慢性的な倦怠感や不調の改善が期待できます。疲労で機能が低下していた内臓(特に消化器官)も、ファスティングをすることで食べるという行為によるストレスから解放され、機能が回復します。そして、免疫機能が活発になり、自然治癒力の向上が期待できます。 

図8. 代謝酵素と消化酵素の関係

図8. 代謝酵素と消化酵素の関係

4.リラックス ~脳の活性化~

脂肪の燃焼が進むと、脂肪の代謝産物としてケトン体※が生成されます。
ケトン体が脳で代謝されると脳内はα波状態(集中、リラックス)になるため、よりリラックスして、思考が聡明化し、記憶力や集中力が向上します。
また、ファスティングによる空腹状態が続くと、覚醒の神経伝達物質であるオレキシンというホルモンが分泌され、五感覚が研ぎ澄まされます。

 

※ケトン体(Ketone bodies):
アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸(β-ヒドロキシ酪酸)、アセトンの総称。脂肪酸ならびにアミノ酸の不完全代謝産物で、肝臓でのみ合成される。グルコースが枯渇しているような絶食時、激しい運動時、高脂肪食においてもケトン体が生成される。骨格筋、心臓、腎臓などでもエネルギー源となるが、肝臓ではエネルギー源として利用できない。

 

5.リセット ~生活習慣の改善~

ファスティングを行うことで、食や自身の健康への関心は深まります。また、食欲の克服や目標を達成することで、その後の食生活はより良質なものに変化していきます。
特に、ファスティングを繰り返し、食生活を改善していくことで味覚は大きく変化し、身体とって良いものを「美味しい」と感じるようになります。喫煙者がたばこをやめる、コーヒーを1日5杯飲んでいた人はが1日1杯になる、濃口が好きだったのに薄口が好きになるなど、食生活が健康方向へとシフトしていくのです。ファスティングと共に深まった食への関心や知識は、身体をこれまでの悪習慣から解放し、本来持つ機能や感覚を取り戻させてくれます。

続く

 

のだぱい

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ファスティングフィットネス協会理事
科学的に正しい断食と筋トレを教えるトレーナー。断食先生。
東京大学農学部で栄養学や生化学を学び、『農学部長賞』『東大総長賞』などを受賞。
ウソに塗れる健康産業の荒波の中で、栄養士・医師にも支持される食事指導や、解剖学に基づいた「正しいトレーニング」をトレーナーや整体師に指導している。
奥多摩で断食道場兼パーソナルジムを経営。「全然辛くない」ファスティング(断食)プログラムの指導・指導者の育成を行っている。

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